スーパーで一般的に販売されているえのき茸は、日光に当てずに菌床で栽培されています。
今回は、その普段わたしたちが食べている白くて細長いえのき茸について書かせて頂きたいと思います。
※天然のえのき茸は日光に当たり茶色い色をしており形も全く違います。
えのき茸の栄養素
ビタミン |
ミネラル |
ビタミンD | ナトリウム |
□ビタミンB1 | カリウム |
ビタミンB2 | マグネシウム |
●ナイアシン | リン |
ビタミンB6 | 鉄 |
□葉酸 | 亜鉛 |
□パントテン酸 | 銅 |
□ビオチン | マンガン |
ビタミンC | セレン |
その他
食物繊維
アミノ酸
えのき茸には、これらの栄養素が含まれています。
85g(1袋)あたり
●マークで太字が特に多く含まれ、□マークは次に多い栄養素。
無印のものは含有量が少なめの栄養素です。
●マークと□マークの働きや効果について説明したいと思います。
↓無印の栄養素についてはこちらから
先日は「しめじ」について書きましたが、えのき茸はしめじと比べるとビタミンDとビタミンCの含有量が少なめで、ビタミンB1・葉酸・パントテン酸についてはえのき茸の方が多く含まれています。
□ビタミンB1
- 疲労回復
- 糖質代謝
- 脳の活性化
- アルツハイマー予防
糖質がエネルギーに変化するのに不可欠です。
不足すると炭水化物の分解がうまくいかずブドウ糖が不足するので、集中力や記憶力の低下や疲労感・だるいなどの症状を引き起こします。
また、運動能力が低下することもあります。
●ナイアシン(ビタミンB群 科学名ニコチン酸)
- 二日酔い予防
- 三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)の代謝
- 神経の安定
- 皮膚や粘膜の健康維持
ナイアシンは体内でニコチンアミド(NAD)に変化し補酵素として働きます。
NADは、アルコールを分解してアセトアルデヒドという物質にし、さらに分解して無毒な物質に変えます。
また、三大栄養素からエネルギーを作るのに必要な酵素を助ける補酵素として働きます。
脳神経の働きを助け、皮膚や粘膜の健康を保つことにも欠かせません。
□葉酸(ビタミンB群)
- 貧血予防
- 皮膚、粘膜の強化
- 動脈硬化予防
- 胎児の正常な発育
葉酸は、ビタミンB12と共に全身に酸素を運ぶ赤血球をつくります。
鉄を摂っていても葉酸とビタミンB12が不足すると貧血になります。
皮膚や粘膜を強くする葉酸(ビタミンB12と共に)。
皮膚や粘膜は、最初にウイルスや細菌などの外敵にさらされる器官であるため、強化することで外敵の侵入を防ぐことができ感染症やアレルギーなどを予防することができます。
※体にある粘膜は、鼻や口の中の粘膜・のどの粘膜・胃や腸の粘膜・膀胱や子宮の粘膜などといった様にたくさんの粘膜があります。
ビタミンB12は、魚介類やレバーに多く含まれています。
かつお節出汁や煮干し出汁のお味噌汁などにエノキ茸を入れたり、魚料理にエノキ茸を添えたり、一緒に炒めるなどして食べると良いでしょう。
この葉酸とビタミンB12の組み合わせが、動脈硬化も予防します。
↓ベターホーム「レシピサーチ」で、良い組み合わせのレシピが紹介されています。
□パントテン酸(ビタミンB群)
- 糖質、脂質、たんぱく質の代謝
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす
- ストレス緩和
- 美肌、美髪効果
体内に吸収されたパントテン酸は、補酵素のコエンザイムA(CoA)をつくる成分となります。
(CoAは体内に広く分布し幅広い代謝に関わっています。)
パントテン酸は善玉コレステロールを増やす働きがあるため、動脈硬化を予防し、またビタミンB6や葉酸と共に免疫力を高めるために働き、感染症を防ぐ効果があります。
更にビタミンCの働きをサポートしているので、コラーゲンがつくられ健康な皮膚と髪を保つことができます。
□ビオチン(ビタミンB群)
- 糖質、脂質代謝
- 皮膚、粘膜、毛髪の健康維持
- 皮膚炎改善
体に取り込まれたビオチンは、酵素たんぱく質と結合し糖質・アミノ酸・脂肪酸の分解に関わる補酵素として働きます。
また、DNAをつくる時にも大事なサポートをします。
たんぱく質をつくる働きがあるビオチンは、皮膚や粘膜・毛髪の新陳代謝を助け健康な状態を維持します。
また、皮膚炎を引き起こす原因物質のヒスタミンがつくられるのを防ぎ、その症状を改善します。
ビオチンは、レバー・魚介類・ナッツ類・卵黄・海藻・納豆など、様々な食品に含まれており通常の食生活をしていれば欠乏する心配はなく、尿中に速やかに排泄されるため過剰症の心配もないと言われています。
フィトケミカル(ファイトケミカル)
えのきには、フィトケミカルのGABA・βグルカン・キトサンが含まれています。
フィトケミカルは、植物が紫外線や有害物質・害虫や外敵などから自身を守るために作り出す物質です。
野菜や果物、豆類などの植物性食品に、色素・香り・苦み・あくなどの成分として含まれています。
フィトケミカルの多くは強い抗酸化作用があるため、老化や病気を防ぎ健康を維持するのに役立ちます。
GABA(ギャバ)
神経伝達物質として働き、ストレスを和らげて脳の興奮を鎮める効果があるとされている成分です。
GABAは、深く質の良い睡眠を保つ効果があることが確認されています。
また、肝臓や腎臓の働きを高めたり、血圧を上げる酵素をブロックする働きがあります。
更に、成長ホルモン分泌を促進したり、コレステロールを下げる作用もあります。
ギャバが不足すると、興奮系の神経伝達物質が過剰に分泌するのを抑制することができなくなり、リラックスできない状態が続いてしまいます。
GABAはストレスや加齢により体内生産量が減少していくため、日頃からGABAを含む食品を積極的に取ることが大切です。
ベタイン
きのこには、甘みや旨みの成分であるベタイン(アミノ酸の一種)も多く含まれています。
- がん予防
- 肝機能改善
- コレステロールを下げる
- 動脈硬化予防
- 糖尿病予防
ベタインは脂肪が肝臓へ沈着するのを防いだり、肝臓の機能を高める働きがあるため、肝硬変や脂肪肝の予防に役立ちます。
また、体内のホモシステイン濃度を低下させると言われています。
ホモシステインは血中に存在するアミノ酸の一種で、このホモシステインレベル濃度が高いと、骨粗鬆症や動脈硬化などを引き起こすと言われています。
ベタインは血糖値の急激な上昇を抑える働きや、コレステロール値の上昇を抑制する働きもあります。
ベタインはキノコの他、ほうれん草やビーツにも多く含まれています。
βグルカン
腸内の免疫細胞に直接働きかけて免疫力を高めてくれるβグルカン(食物繊維の一種)。
感染症の予防や、アレルギーの予防・改善などの効果が期待できます。
また白血球やリンパ球を活性化し、がん細胞の発育を抑制するとされています。
キトサン
また、不溶性食物繊維のキトサンも含まれています。
がん細胞の増殖を抑制したり、肝機能を強化するなどの作用が期待されています。
食物繊維
- 正常なコレステロール値を保つ
- 血糖値の上昇を緩やかにする
- 高血圧の上昇を抑制
- がん予防
- 有害金属の排泄促進
- 整腸作用
- 免疫力アップ
食物繊維は、脂肪の吸収を緩やかにします。
余分なナトリウムや脂肪・コレステロールを包み込んで排出させたり、有害物質や発がん物質を吸着し早く体の外に追い出したり、腸の掃除などをしてくれます。
また、糖質の消化吸収がゆっくりになり、血糖値の上昇を抑えるため糖尿病の予防にもなります。
更に、消化管内で膨潤し食塊のかさを増し、胃内での滞留時間を延長させますので過食を防ぐことができます。
免疫機能の60~70%は「腸」に集中しているため、腸内環境を整えることは免疫力を高めることに繋がります。
腸の健康をつくっている善玉菌は、食物繊維の摂取によって増やすことができます。
えのき茸には、疲労を回復したり脳を活性化するビタミンB1や、皮膚や粘膜・毛髪の新陳代謝に必要なビオチンなど、ビタミン類が豊富に含まれています。
炒めものや天ぷら、お鍋などぜひいろいろなお料理に取り入れてみてください。
きのこには、脂溶性ビタミンが含まれているので油脂と合わせて摂取するのが良いですが、水溶性ビタミンも含まれているため野菜などと炒めた際に煮汁が出る場合は、片栗粉でとろみを付けるか、春雨を入れて煮汁を吸わせることでしっかりとどちらのビタミンも摂取する事ができます。